「報道されないリスク」──菅平高原の落雷対策を考える
2025年夏、NHKが報じた「菅平高原の新たな落雷対策」。

国内屈指のラグビー合宿地として、毎年50万人以上が訪れる菅平にとって安全対策は欠かせません。最新の雷観測システム「ライトニングステーション」が導入され、リアルタイムで警報を出せるようになったことは確かに大きな前進です。
しかし、記事を読みながら、どうしても引っかかる部分がありました。
「落雷が起きやすい高原」?
記事では、菅平が「雷が起きやすい地形」と表現されています。
たしかに夏の午後は積乱雲が発達しやすく、雷が発生することもあるでしょう。
でも「雷が起きやすい=危険地帯」と断定的に伝えられてしまうと、長年“安全な合宿の聖地”として積み上げてきたブランドが損なわれかねません。
本来なら「夏季は雷が発生しやすい条件になることがある」と表現すべきではないでしょうか。
情報伝達スキームの落とし穴
さらに気になるのは、警報が鳴ったあとの運用です。
観光協会 → 宿泊施設の担当者 → チーム管理者
という流れで連絡を伝達する仕組みが導入されたと説明されていました。
一見すると整った体制に見えますが、ここには重大なリスクがあります。
もし宿泊施設の担当者がホテル業務で忙しく、通知を見落としたら?
そのタイミングで不運にも事故が起きたら、責任は誰にあるのでしょうか。
最新鋭システムの精度が90%を超えても、最後のボトルネックは“人の見落とし”。
これは現場感覚で見ればすぐに浮かぶリスクですが、記事では触れられていません。
本来あるべき仕組み
せっかく「ライトニングステーション」のような高度なシステムを導入したのなら、
協会やシステム側からチームに直接アラートを送る仕組みにすべきではないでしょうか。
宿泊施設は補助的な役割に徹し、通知の二重化をする。
そうすれば責任の集中も避けられ、情報伝達のスピードも格段に上がります。
報道に欠けていた視点
今回のNHK記事は「新しい仕組みができた」という前向きな面だけを切り取っています。
ですが、現場を知る人間からすると「課題はまだ山積み」です。
避雷小屋が不足している現状
グラウンドと宿舎が離れているケースへの対応
通知責任の所在の曖昧さ
こうした点に踏み込まない報道は、実態と乖離していると感じざるを得ません。
おわりに
菅平は“雷が多くて危険な場所”なのではなく、
「落雷事故ゼロを守り続けてきた文化と仕組みを持つ場所」です。
選手・監督・宿がみんなで気をつけてきた文化の力なのです。
新しいシステム導入をきっかけに、
「雷対策の先進モデル地域」として全国に発信できるようにする。
そのためには、報道や協会が「リスクも含めた本当の現場の声」に耳を傾ける必要があるのではないでしょうか。
ではまた👋

